せーはくの備忘録

備忘録(びぼうろく)は、記憶すべき事柄を簡単にメモするための個人的な雑記帳である。

豊崎愛生 4thアルバム『caravan!』感想

2021年6月30日に発売された豊崎愛生さんの4thアルバム『caravan!』感想です。

www.sonymusic.co.jp

 

 

 

収録曲・クレジット

01.それでも願ってしまうんだ ★
 作詞:田淵智也/作曲:mito/編曲:mito
 Rec Engineer:Neeraj Khajanchi
 Mix Engineer:森田良紀

02.MORNING:GLORY ★
 作詞:古屋真/作曲:さかいゆう/編曲:臼井ミトン
 Rec Engineer:森田良紀
 Mix Engineer:森田良紀

03.ハニーアンドループス
 作詞:仁科亜弓/作曲:古川貴浩/編曲:古川貴浩
 Rec Engineer:森田良紀
 Mix Engineer:秋葉知伸

04.Cheers! ★
 作詞:土岐麻子/作曲:Tomi Yo/編曲:Tomi Yo
 Rec Engineer:米田聖
 Mix Engineer:米田聖

05.ランドネ
 作詞:佐藤良成/作曲:佐藤良成/編曲:佐藤良成
 Rec Engineer:森田良紀
 Mix Engineer:森田良紀

06.マイカレー
 作詞:仁科亜弓/作曲:仁科亜弓/編曲:仁科亜弓
 Rec Engineer:森田良紀
 Mix Engineer:森田良紀

07.ライフコレオグラファー ★
 作詞:山崎真吾/作曲:山崎真吾/編曲:山崎真吾
 Rec Engineer:森田良紀
 Mix Engineer:美濃隆章

08.walk on Believer♪
 作詞:橋口靖正/作曲:橋口靖正/編曲:橋口靖正
 Rec Engineer:森田良紀
 Mix Engineer:森田良紀

09.TONE ★
 作詞:田村歩美/作曲:田村歩美/編曲:福田真一朗
 Rec Engineer:森田良紀
 Mix Engineer:森田良紀

10.March for Peace ★
 作詞:矢野水音/作曲:ANDW/編曲:ANDW
 Rec Engineer:森田良紀
 Mix Engineer:森田良紀

All Sound Produce:串崎元
All Mastering:酒井秀和

※「★」付きはアルバム新曲。

 

 

感想

 

ベスト盤などを除くと5年3ヶ月ぶりとなる豊崎さんのニューアルバムに向けて、私は「豊崎愛生のおかえりらじお」をはじめとする各媒体で発信されるすべての情報をシャットアウトしました。

これは私がマジで音楽に向き合いたいときにやる手法で、5年前はそんな楽しみ方を知らなかったけど、豊崎さんのおかげで広がった先の世界で、私はこうすることで得られる音楽の楽しさを知りました。もちろん徐々に解禁されていく情報をリアルタイムで追っていくことで得られる楽しさもあって、どちらかを選ぶとどちらかは切り捨てることになるんだけど、今回、私はこちらの道を選んだわけです。

 

そうして迎えた発売日の深夜、一聴した率直な感想は「ずいぶんパーリーピーポーなアルバムだな」というものでした。それから約2週間後、2周目を聴いた今は「とんでもなく良いアルバムですね……」という感想を抱いています。

 

クレジットオタクなので真っ先にエンジニアに言及してしまうんですが、まず森田さんの名前がたくさんありますね。これは前作アルバム『all time Lovin'』と同様で、03『ハニーアンドループス』のMixを担当している秋葉さんも前作から引き続きの起用です。

ではそれ以外の方について。01『それでも願ってしまうんだ』のRecを担当しているNeeraj Khajanchiさんがめちゃとんでもない人で、アメリカではマイケル・ジャクソンを、日本では三浦大知大森靖子SUGIZOLittle Glee Monster、[Alexandros]などを担当しているスーパーエンジニアです。エグいて。調べててひっくり返ったわ。

04『Cheers!』のRecとMix担当の米田さんは、土岐麻子ミュージックを長くやっている方なので納得の起用ですね。ちなみにミュージックレイン的に言うと、Chico with HoneyWorksもこの人が多いです。

07『ライフコレオグラファー』のMix担当である美濃さんはバンド・toeのメンバーなんですが、このバンドのゲストボーカルにCHARA原田郁子クラムボン)、土岐麻子などのアーティストが参加していたり、美濃さん個人としてはbonobos蔡忠浩さんのバンドね)のエンジニアリングをしていたり、豊崎さんとは今回が初めましてだけど豊崎さんとゆかりのある方々とやっています。そんな方を、音楽的に新しい挑戦だったこの曲のMix担当に起用したのはめちゃくちゃ納得感があって、現につるっと通して聴いても「この曲だけ音のつくりが違うな」と感じられるのはとても素敵ですね。

 

つまり、エンジニア陣の起用がとても良い。豊崎サウンドをちゃんと踏襲しつつ、要所要所で程よくはみ出している印象があります。良い音楽やってるぜ、このアルバム!

これは私見ですが、楽曲を料理に例えると、ボーカルはメインの食材、楽器隊は添え物の食材、作詞作曲編曲はレシピ、エンジニアは料理人だと思っています。今の音楽業界は、歌い手だったり楽曲提供者だったりが表面に出てきがちだけど、そのレシピや食材を活かすも殺すも料理人の腕にかかっている部分がたくさんあって、どれだけ良い素材が手に入っても、エンジニアリングが良くないと「良い曲」にはなるかもしれんが「良い音楽」にはならないのだ。多分。専門知識がゼロなので間違ってたらスマン。

 

 

初聴時に「パリピだ」と思った感覚を紐解くと、音数(ボーカル的にというよりサウンド的に)の多い各曲が並んでいることに加え、ラストを飾る『March for Peace』のミラーボール感(寿美菜子『Another Wonderland』に通ずるものがある)が半端ないことによるものだったと思っていて、某バンドの某アルバムの某キャッチコピーを借りると、

なんかグチャッとしてんだよな。

という感覚と近いニュアンスの「パリピだ」でした。つまり、情報量の多い、かつ、てんでバラバラな曲たちがいて、そいつらが最終的にミラーボールの元に集まってウェーイ!みたいな。そう、グチャッとしてんだよな。

ただ、そんな曲たちが2周3周と聴きこむごとにきちんと豊崎愛生さんの音楽として染み込んでくれる心地よさがあって、「良いアルバムですね」となっています。なう。

 

****

 

1曲1曲に対して解説したり感想を書いたりすることにあんまり興味がないのでそれは他の人に任せるのだけど、1曲だけ。04『Cheers!』は豊崎さんがご結婚されたからこそ説得力をもって歌える歌だと思っていて、そんな歌詞を土岐麻子さんが書いたこと、そしてその中に「東京タワー」が出てくることで、今の豊崎さんにとっての「東京とはなんなのか」が明確に示されたような気がしています。とても良い曲です。

 

全体の構成でいうと、01『それでも願ってしまうんだ』のリード曲は大正義として、02『MORNING:GLORY』で起きてからの03『ハニーアンドループス』でプィプィチイチャンするのは完全に土曜6時半って感じで最高ですね。あの朝を返して。

04『Cheers!』の置きどころは難しかったなと思ったりしたけど、05『ランドネ』と06『マイカレー』で豊崎さん的な生活に根ざした既存曲を並べてからの07『ライフコレオグラファー』で異色ミュージックを鳴らしてからの08『walk on Believer♪』で原点回帰……という流れが美しすぎるので、逆算的に4曲目にきたのかなと妄想。あと、この曲が後半にあると意味合いが重すぎるし。

そして終盤は、09『TONE』で仄かに終わりを感じさせてからの10『March for Peace』でパーッと締める。美しすぎるだろ。

 

****

 

01『それでも願ってしまうんだ』と10『March for Peace』の繋がりみたいなものについて。

 

配信ライブで『それでも願ってしまうんだ』が先行披露されたときに違和感があって、それは「『大切なみんなとの話』って歌詞、豊崎さんらしくないな」という点でした。豊崎さんなら「大切なあなたとの話」だろ、と。

歌詞を書いているのは田淵さんで、2ndアルバムのリード曲『letter writer』で「また君に会えますように」の名フレーズを豊崎さんに提供した方なので、今回のリード曲で二人称を「みんな」にしているのは、何か明確な意図があるんだろうなと思っていました。

その違和感が解消されたのが『March for Peace』を聴いたときです。この曲はとにかく主語がデカい。「そうして僕ら人間は」ですよ。徹底して「あなた」に語りかけてきた豊崎さんからは想像もできないほどスケールの大きなことを歌っていて、この曲にも違和感がある。

 

こうして『それでも願ってしまうんだ』と『March for Peace』を並べてみると、どちらの違和感にも共通した部分があることに気付いて、そういう目線で『caravan!』を聴いてみると、「あなた」に向かって歌っていると思っていた2~9曲目も、もしかして世界に対して歌っているんじゃないかと感じてきてですね。

豊崎さんは頭が良い人で、自身の音楽活動にとても拘りを持っている人で、変化を恐れない人。であれば、この発見はあながち間違ってないんじゃないかと。つまり、このアルバムの中で、既存曲の再解釈を図ったのではないかと思っています。もちろん新曲たちもその脇を埋めるかたちで大活躍。どひゃあ、堪らんな。

 

そうして創り上げた1枚が、豊崎さんの音楽第2章のはじまり。パーソナルな距離で愛を届ける第1章から、広大な砂漠の中で超絶スケールの幸せを歌う第2章のはじまりです。

マジで予測不可能。今後の活動に楽しみと期待しかないです。すごいことになるぞ。

 

 

というのが、いったん私が抱いた『caravan!』への感想です。ようやく書けた。

よし!!!やっとインタビュー読める!!!!

 

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