せーはくの備忘録

備忘録(びぼうろく)は、記憶すべき事柄を簡単にメモするための個人的な雑記帳である。

UNISON SQUARE GARDEN 9thアルバム『Ninth Peel』感想

2023年4月12日に発売された、UNISON SQUARE GARDENの9thアルバム『Ninth Peel』の感想です。

 

unison-s-g.com

剥いたら答えがあるのでは?

ニゾンの9枚目のアルバムが満を持して完成した。
2022年にリリースした強烈なアニメ主題歌2曲を含む全11曲はこだわりがあるようでないようで、解釈が難しい。
ソングライターの田淵曰く「普通にやってるロックバンドの、普通の最新アルバム」らしい。
結成20周年を目前に控え、何を「最新のユニゾン」として提示するのか?
剥いてみよう、答えが見つかるかもしれない。

 

 

 

収録曲・クレジット

 

01.スペースシャトル・ララバイ 
02.恋する惑星
03.ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ
04.カオスが極まる
05.City peel
06.Nihil Pip Viper(Album Mix)
07.Numbness like a ginger
08.もう君に会えない
09.アンチ・トレンディ・クラブ
10.kaleido proud fiesta
11.フレーズボトル・バイバイ

※[M4,10]はシングル曲。
※[M6]は配信シングル曲。

Vocal+Guitar:斎藤宏介
Bass:田淵智也
Drums:鈴木貴雄
Produce:UNISON SQUARE GARDEN
Words+Music:田淵智也

Horn Arrangement:伊藤 翼[M2]
SE Arrangement:eba[M4]
Strings Arrangement:伊藤 翼&田淵智也[M10]

Recording Engineer:畠山耕平
Mix Engineer:畠山耕平[M1,2,4,5,6,7,9,11]、渡辺敏広[M3,8,10]
Mastering Engineer:柴 晃浩

 

 

感想

 

11曲入りで総尺は40分13分と、ここ数作のアルバムよりも1曲ぶん少ないコンパクトな内容の1枚です。正直言って「12曲ないんだ……」とがっかりしたのが本音だけど、つるっと聴いたときに[M11→M1]の流れがハマっていることで、「M1がM12の役割をもっているやつ~!」と理解しました。

田淵さんが近年しきりに言っている「バンドって新曲つくらないといけないの?」という主張を数字上で示しつつ、前作8thアルバム『Patrick Vegee』で徹底した<曲のつなぎの美しさ>をしれっと入れ込むという、この絶妙なバランスよ。さすがUNISON SQUARE GARDEN、一筋縄ではいかない男たちです。

 

私としては、ファンなので新曲はそりゃ嬉しいんだけど、新曲なくても良いライブをしてくれるという確信もあって、バンド側が「新曲、作らなくてよくない?」と思ってるなら、好き勝手どうぞという気持ち。ただ、新曲がないとメディア露出(ラジオとか、雑誌とか)をする機会は減るので、そこはちょっと悲しい。

バンドが世の中に迎合した結果、いわゆる<わーきゃー勢>が増えるのは嫌だしそれはやらないという信頼はあるんだけど、私はUNISON SQUARE GARDENに出会ったおかげで人生が豊かになったので、今のスタンスを崩さない程度に、接触機会やメディア露出の数はキープしてほしいなと思っちゃうわけですね。このバンドに出会ったことで救われる人間も必ずいるはずで、そんな誰かに、バンドを知らないまま人生を諦めてほしくないなぁという。

でも、完全生産限定盤に付属しているライブBDのコメンタリーで、田淵さんが『10% roll, 10% romance』『Invisible Sensation』『fake town baby』の3曲に対する思いを語っていて、それが「新曲、作らなくてよくない?」に繋がっているのかな、と思ったり。この3つのシングルは立て続けにリリースされていて、たしかに受け取り側としても咀嚼しきれなかったのは否めないですからね。

そう思うと、新曲は(ある程度は)作らなくてもいいのかもしれない。ただし、アルバムツアーではアルバム収録曲を全部やるのが礼儀だろと思っています。そこはバンドと一生ケンカしちゃうかもな……。

 

***

 

フラゲ日の夜に一聴したときの感想としては、「まとまりやコンセプトみたいなのは感じないんだけどツルっと聞けちゃって、しかもなんか楽しいという、不思議なアルバム」というもの。

7thアルバム『MODE MOOD MODE』と8thアルバム『Patrick Vegee』がめちゃくちゃ良く、アルバムとしては最高傑作だろ感があって、今回はそことは違うところを目指したら何が起こるかな、みたいな、「行ってこい」的な化学反応を楽しむアルバムだなと。

これまでのUNISON SQUARE GARDENに期待していたものではなかったけど、全然ポジティブに受け入れられて、これはこれで良いっすねと思えました。

 

一聴して好きだなと思ったのは、M9『アンチ・トレンディ・クラブ』からM10『kaleido proud fiesta』の流れです。世界がぱーんと開ける感じが良かった。単体でいうと、M5『City peel』の「時計はそろそろ13時を指す」がグッときましたね。このメロディにこれ以上ハマる歌詞ってないだろ!?という感動がありました。

 

それと、ユーザーとして近年なんとなく受け取っていたことと、メンバーがバンド自身に感じていた変化が、まぁまぁ重なっていたことがわかって、安心とは違うんだけど、「あ、やっぱそうっすよね」みたいな気持ちでしたね。

 

田淵 俺の熱量が落ちているということはまったくないんですけど、「こうじゃなきゃ」ということを過剰に考えて「そのためにはこのぐらい虚勢を張らねばならない」みたいな時期が過去にはあったんです。そこと比較すると、もしかしたら田淵が盛り下がったような感じに見えるかもしれないけど、これはこれで自分の選んだ好きな生き方だから。
そうなってみると鈴木くんが今作ろうとしている「ユニゾンとしてこういう世界観が一番カッコいいんだ」というものとバランスが取れて。結果としていいライブができる新しい形が生まれたので、バンドって面白いなと思います。

UNISON SQUARE GARDEN「Ninth Peel」インタビュー|ひと皮むけたニューアルバムを経て到達した3ピースバンドの真骨頂 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

 

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アルバムの宣伝施策の一環として配信された「DRIP TOKYO」でのライブで先行披露された、M8『もう君に会えない』が意味合いとしてはとても重たくて。

youtu.be

 

友達が立て続けに死んだり、世の中が新規感染症の渦に飲まれたりしたこの数年間、自然と「命」「人生」について考えることが増えたんじゃないかなと想像していて、アルバムを聴いていても、そういう歌詞が多用されているように思う。

「普通にやってるロックバンドの、普通の最新アルバム」という田淵さんの言葉も、「俺たちは普通に生きてくよ」というメッセージを包含したものなのかもしれない。

 

どうしようもなく どうしようもなく 息をしたくなって
どうしようもなく どうしようもなく 生きてみたくなった

――M1『スペースシャトル・ララバイ』

君と同じ世界に居たい まだまだ光っていたいのだ!

――M2『恋する惑星

こんなんじゃ青春が終わっちゃう!死にたくなってしまう
だけどどうせいつか終わるなら
毎日をちゃんと諦めないでくれ

――M3『ミレニアム・ハッピー・チェンソーエッジ』

人生の意味がちょっとだけわかったような 気になったけれどまだ置いておく

――M5『City peel』

命はある それっぽっちのことでもおみやげになるから

――M7『Numbnesslike a ginger』

一緒に居ようぜ

――M9『アンチ・トレンディ・クラブ』

今を 今を 今を 今を 誇れるかだろ

――M10『kaleido proud fiesta』

一聴じゃわからないなら
再来年頃にすれ違うとしよう

 

またいつか会えたらいいから Hello, 今夜も楽しかったね
忘れられない今日になった!

――M11『フレーズボトル・バイバイ』

 

まぁ、歌詞カードはあんまり見ないし、これまでの歌詞もよくわからんので、「こういう言葉はこれまでも登場しており、変わったのは田淵さんではなく私」という説もあるっちゃあるのですが。そこの正解・不正解は置いておくとして、こういった歌詞たちが、2023年春にリリースするアルバムとしての意味合い(斎藤さんの言う「チャプター」)を与えているように思います。

――サブスク時代のなかで、3人にとってアルバムを出すことの意義というか意味みたいなものはどう考えていますか?

斎藤 自分のなかでは、バンドの歴史にチャプターを打つということですかね。わかりやすくフェーズが変わるから。

「Ninth Peel」SPECIAL SITE | UNISON SQUARE GARDEN

 

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以下、余談。

  • 箱がマジでデカいので、CD棚に入らない。TV台に飾るか。
  • 帯コメントは「多数が正義じゃないのでは?」。このマインドを忘れないようにしたいね。
  • 特典のトランプがかなりイイ。数字の1~9に1st~9thアルバムのモチーフを、10は10周年記念アルバムのモチーフをデザイン。11~13はメンバー写真でした。
  • ツアーは神奈川・ぴあアリーナMMに行きます。楽しみですね。

 

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