せーはくの備忘録

備忘録(びぼうろく)は、記憶すべき事柄を簡単にメモするための個人的な雑記帳である。

20220621

  • 火曜日。出社。暑い。
  • 昨日は休みだったので、仕事をしてから映画を見た。いいですか、これが叙述トリックです。

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  • で、映画を見た。『ハケンアニメ!』。昨日は感想を書く元気がなかったので今日書く。

連続アニメ『サウンドバック 奏の石』で夢の監督デビューが決定した斎藤瞳。だが、気合いが空回りして制作現場には早くも暗雲が…。瞳を大抜擢してくれたはずのプロデューサー・行城理は、ビジネス最優先で瞳にとって最大のストレスメーカー。「なんで分かってくれないの!」だけど日本中に最高のアニメを届けたい! そんなワケで目下大奮闘中。

最大のライバルは『運命戦線リデルライト』。瞳も憧れる天才・王子千晴監督の復帰作だ。王子復活に懸けるのはその才能に惚れ抜いたプロデューサーの有科香屋子…しかし、彼女も王子の超ワガママ、気まぐれに振り回され「お前、ほんっとーに、ふざけんな!」と、大大悪戦苦闘中だった。

瞳は一筋縄じゃいかないスタッフや声優たちも巻き込んで、熱い“想い”をぶつけ合いながら “ハケン=覇権” を争う戦いを繰り広げる!!その勝負の行方は!? アニメの仕事人たちを待つのは栄冠か? 果たして、瞳の想いは人々の胸に刺さるのか?

映画『ハケンアニメ!』公式サイト

  • あらすじが長ぇ。まとめると、新人アニメ監督を主人公にしたお仕事モノです。原作は辻村深月の小説。
  • 以下、ネタバレあります。ものづくりが好きな奴は見てくれという作品なのと、もうそろそろ大きめのところでは公開終了してしまいそうな雰囲気があるので、早めのチェックがおすすめです。

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(ネタバレ回避の改行目的で、カメラロールに保存してあった「おしゃれすぎるトイレ」を貼っておきます)

  • 端的に評価を言ってしまうと「うーん、いまひとつ」と言った気持ちでした。期待したレベルではなかった。
  • 物語としては「さすが辻村深月」といった感じで、とてもよくできていた。主人公の瞳の人間性が序盤に示されていて、かつそれが応援したくなるもの(夢を追いかけて飛び込んできたとか、隣の家の子(たいよう君)(ちょっと不幸な身にあるらしい)を日常的に助けるくらい良いヤツであることとか)だったので、まずそこでイイネとなった。こういうお仕事ものって、話の本筋(つまり題材となる仕事)が尖っている分、主人公がいかに普遍的な魅力を持っているかが大切だと思うので。
  • で、その瞳の憧れでありライバルである王子もとても魅力的なキャラクターだった。わかりやすく天才で、かつ、「天才はこうであってくれ」を体現してくれる存在だった。中村倫也、最高や!
  • ほかのサブキャラも魅力的で、文句は言いつつもなんやかんやで仕事に愛を持っているんですねというのが伝わってきましたね。あれだけの人数が2時間に出てきたのに、公式サイトの相関図を見て「こいつ誰だっけ?」となる人がいなかったのはなかなか凄いと思った。
  • あと、なんと言っても劇中アニメ2本のクオリティがものすごく高かった。公式サイトに寄せた原作者コメントで、辻村深月

私の小説の中では最も映像化が難しいタイトルだと思っていました。理由は、作中に登場する二本のアニメ。「その期の覇権をとる」と言われるようなクオリティーのアニメを現実に映像内に再現してもらうのはまず無理だろうと諦めていました。

  • と言っていたけど、それを叶えた両チームには天晴れと言わざるを得ないですね。特に『サバク』で主役を務めた高野麻里佳さんは、「実力はないが客寄せとして声優に起用されたアイドル」という、本職声優にとってはなかなかパンチの効いた設定のキャラを演じていて、しかもそれが嫌味なく(悪い意味ではない)ハマっていて、めちゃくちゃ良かった。
  • とまぁ、ここまで褒めて「いまひとつ」なのには理由がある。ひとつめ。言葉に頼りすぎなところ。
  • これは邦画あるある&小説原作あるあるなんだけど、例えば「なんでも揚げるカップ麺(だっけ)」をたいよう君に見せるくだりで「届いてるじゃん」と瞳が言うシーン。あれ、瞳の表情芝居だけで足りているのに言う必要ある?ダサくない?と思ってしまった。
  • ほかにも「うぉー、辻村深月っぽい〜〜!」という強烈なセリフ回しがところどころにあって、なんだかびっくりしてしまったり。キャラクターの言葉というより辻村深月の言葉になっちゃうんだよな(芝居力の問題かもしれないがそれを言うのは野暮なので言いません)(言ってしまった)。
  • 小説ならテキスト化しないといけないのでそうなるのは分かるんだけど、これは映画ですからね。小説にある表現を、もっと映画ナイズしてほしかったなという気持ちです。
  • ふたつめ。製作陣のマインドが俺にはあまり刺さらなかったところ。
  • この映画に込められるべきメッセージのひとつが「評価基準として「数字」という客観的な指標はめちゃ便利なのはわかる。だけど、それより大事なのは好きなことを貫くことだ!」というものだと思っています。瞳も王子もそういう人として描かれていたから。
  • なのだけど、『サバク』と『リデル』の人気度を示す指標として、「視聴率」「口コミの量」のふたつが徹底的に描かれていて、めちゃモヤッとした。
  • そしてラストは、「Blu-ray予約数1位 サバク」の表示を見て、瞳を支え続けたサバクのプロデューサー・行城が小躍りするというシーンでフィニッシュ。
  • 「は?」となってしまった………………。
  • 前者はまだわかる。何故なら「世間はそういうもの」という皮肉なのだと思うので。
  • でも後者はやっちゃいけないんじゃないの。確かに行城は成熟した価値観を持つ大人で、瞳に影響されるほどヤワじゃないのかもしれないけど、劇中で初めて喜びの感情を出すのが、結局数字絡みのシーンだったことに強く失望してしまった。あれだけ瞳は好きを貫くことに魂を注いでいて、行城はそれを支えてきたのに。瞳が生み出した『サバク』は確かにたいよう君の人生を明るくしたけど、行城の価値観は変えられなかったということ?
  • Blu-ray予約数1位 リデル/2位 サバク」の紙を見て、「ま、どうでもいいや」とポイって捨てちゃうようなラストだったら良かったのになぁと思ってしまう。それかせめて、瞳がワガママ言って結末を変えてしまったけど、それでも『サバク』が完成したときに、行城が「これでいいんだ」とガッツポーズをつくるようなシーンがあれば良かったのに。
  • なんか、全然ハッピーエンドじゃねえなって思ってしまったんですよね。なんだかなぁ。
  • まぁ、文句というか「それでいいんか!?」という点はあるけど、とても良い映画であることは間違いないです。観た人は感想を教えてください!!!

 

  • 22時過ぎ。退勤。雨が降っていた…………。降らないって言ってたのに…………。

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  • 悲しみを抱えながら帰ります。おわり。