せーはくの備忘録

備忘録(びぼうろく)は、記憶すべき事柄を簡単にメモするための個人的な雑記帳である。

20220227雨宮天「SKY」愛知公演

うけ‐い・れる【受(け)入れる】

1 受けて入れる。「水を器に—・れる」
2 人や物を迎え入れたり、引き取ったりする。「留学生を—・れる」「海外の文化を—・れる」
3 人の意見や要求などを認める。「主張を—・れる」

 

うけ‐と・める【受(け)止める】

1 自分の方に向かってくるものを支えて、その進行や攻撃を止める。「ボールを—・める」
2 事柄の意味をしっかりと理解する。自分の問題として認識する。「忠告を謙虚に—・める」

 

デジタル大辞泉より)

 

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概要

 

公演名:LAWSON presents 雨宮天 BEST LIVE TOUR -SKY- 愛知公演

日程;2022年2月27日(日)

会場:愛知県芸術劇場 大ホール

開演;18時43分

終演;20時50分

 

出演:雨宮天

天ちゃんダンサー;MIKU、SAIKA、YUKA、HANA

天ちゃんバンド:荒幡亮平(Key.&バンマス)、田中航(Dr.)、奥野翔太(Ba.)、城石真臣(Gt.)

※ギターはパンフレットでは宮永治郎となっています。

■LAWSON presents 雨宮天 BEST LIVE TOUR -SKY- | TrySail Portal Square (トライセイルポータルスクエア)

 

 

セットリスト

 

※ベストBLUE盤から9曲、ベストRED盤から8曲、ベストアルバム以外から5曲。

 

 

感想とか

 

ステージセットはシンプルな作り。空中に大きさバラバラな5つの球体が吊るされているのみ。

バンド配置は下手からベース、ドラムス、キーボード、ギター。

中央奥、ドラムスとキーボードの間に小さな2階ステージあり。そのさらに奥、メインモニターとしても使われる白幕が張られていた。

 

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私にとって、2018年9月以来となる雨宮天さんのソロライブでした。

2020年1月に開催された5周年ライブ“The Clearest SKY”は仕事のため不参加、2020年9月の"Paint it, SKY”は全公演中止。その間、Music Rainbowや「音楽で彩るリサイタル」、そしてツアーの代替として配信された「"Paint it, SKY" Online Live」などには参加してきましたが、やっぱり本人名義の曲を直接受け取ると、いろいろな感情が芽生えるもんですね、という発見に満ちたライブでした。

 

どこから書こうか。難しいな。

えー、全体としては本当に素晴らしいライブでした。TCSがある種の到達点だったと思っていて(Blu-rayで見た)、その先のライブで何を描くのかというところが気になっていたんだけど、明確に進化した姿を見せてくれたのが素晴らしかったです。雨宮さんを好きになって良かった。

 

きっと素晴らしいものを届けてくれるだろうという、向こう側への期待はしていたものの、私自身がそれを十二分に噛み砕けるのかは、正直、ちょっと不安だったんですよね。ありがたいことに縁と運とタイミングが重なって、それまでのライブにたくさん参加してきて、その一方でここ3年半、つまり最後のライブ参加以降、雨宮さんの音楽活動にろくに触れてこなかったから。

私は、雨宮さんの音楽とはそこまで相性が良くありません。普段聴くのはUNISON SQUARE GARDENとハンブレッダーズ(要するにポップス方向のバンドサウンド)だし、TrySailで好きな曲は『adrenaline!!!』だし、ソロの中で日常的に聴くのは夏川さんだし。

それに加えて、私にとって雨宮さんはステージ上の人です。つまり、手を振り合ったり、会話をしたりしたい存在ではなく、隔絶された世界から一方的に拍手を送りたい存在なので、ラジオもそんなに聞かなければ、日常の中に雨宮さんの歌が流れることは、ぶっちゃけ無い。

でも、ちゃんと雨宮さんのことは好きだし作り出す空間も好きだからライブにも行っていて、そこで音楽を摂取してきたけど、裏を返せばライブに行かなくなると本当に聴く機会がないというのが事実。なので、直近3年半でリリースされた楽曲の数々のほとんどは身体に馴染んでいなくて(『Queen no' cry』を除く)(これは名曲です)、サビまで歌われても「これは……何の曲だ!」となることが多かった。

もちろんこれは事前に予測できていたことなんだけど、それすらも丸ごと包み込んだ上で今の自分が何を思うのかを知りたくて、予習めいたものはせずにライブに臨みました。

ただ、これを声高に言うのも違うじゃん。人によっちゃ「舐めとんのかワレ」ってなりそうだなぁと思うと親しい友人にも言えなかったりしました。終わった後に打ち明けたらカラッと笑ってくれたので杞憂だったんだろうけど。

 

 

で、その3年半で起きたこととして、生バンドが導入されたことがありますね。めちゃくちゃ良かったな。初の生バンドだったTCSは先述のとおり不参加だったのと、同じく生バンドだったオンラインライブはまぁオンラインなので、そんなに「生バンド、サイコー!」の気持ちにはならなかったんだけど(とはいえ、これはこれで面白い催しなので是非今後も継続してやってほしい気持ち)、やはり会場のデカい音を浴びて、内臓で音楽を感じられるのは良い。それに、雨宮さんがボーカリストとして圧倒的な存在感と安定感がある分、バンドチームも割とやりたい放題やっていて、それがまさに「音楽」という感じがあった。雨宮さんのライブでこんなに身体が動くとは思わなかったですね。息つく暇もないノンストップ感も大変良かった。

そのバンドで言うと、やはりキーボードが随所で目立っていた。ライブの幕開けもキーボードソロからだった(ような記憶がある)し、そもそも雨宮さんの場合は楽曲のなかでもフィーチャーされがちだったりする。それを補うためなのか、ほかの3人はライブの合間(着替え中のときだっけ)にソロ演奏コーナーがあって、今回はそのときの照明が印象的だった。ギターは赤、ドラムは緑、ベースは黄色。となると、キーボードは青ということなのかなと勝手に想像していて、キーボードは雨宮さんの代弁者なのかなぁ、みたいな。

 

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そのバンドが最も輝いたのが『夢空』。2014年8月にリリースされたデビューシングル『Skyreach』のカップリングであるこの曲が、今回はなんとバンドアレンジされたロックチューンとして披露されました。

リリース当時、50人くらいの会場で、ひとりひとりと目を合わせて歌っていた曲がこんな進化を遂げるとは。私は『Skyreach』のリリイベに全て参加していて(全通が正義とは思っちゃいないが私にとって大切な思い出だ)、恐らく死ぬときの走馬灯としてリリイベの『夢空』が流れるだろうと思っているので、この曲の新たな姿を見せてくれたことにめちゃくちゃ昂ってしまいました。

Skyreach』のプレリリースイベント第2部で、「『夢空』のレコーディング時期に風邪を引いてしまって苦戦した」という話があって、「いつか録り直して、本気の『夢空』を形にしてほしいな」と7年半(そんなに経つのか!)思っていたけど、バンドアレンジかぁ……。これが2022年の雨宮さん流の目の合わせ方、コミュニケーションの取り方なんでしょうね。

「優しい声が聴こえる」、もう耳に手を当てなくても届いてるんだなって嬉しかったし、雨宮さんが「青春アレンジ」という表現をしていて「俺にとってはこの曲が青春そのものやで」と思ったりもした。正直、ちょっと泣いた。

それと、この曲の序盤で、キーボードの荒幡さんが拳を上げて客席とコミュニケーションを取っていたのが印象的でしたね。雨宮さんの代弁者という解釈は先述のとおりだけど、俺たち(青き民)の代弁者でもあるんだなと思えた瞬間でした。

 

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MCは湯豆腐ダイエットの話、グッズのバブ着の話、前夜に放送されたラジオでの『パンプキン・ミート・パイ』の話、ニューシングル『Love-Evidence』発売決定のお知らせ。

いつからか定番化した、ステージの上手下手を行ったり来たりしながら駄弁るこのMCがとても好きです。「それでね」を「ほいでね」と言うようになったのっていつからなんだろう。可愛いかったな。

 

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影!!!!(『ロンリーナイト・ディスコティック』のラスト)(影にロマンを抱く俺がざわめいた瞬間)

 

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ライブ後半戦に差し掛かるときに「真っ青に染めていくぜ」的な煽りがあって、「これは『Absolute Blue』やろ」と思ったら『Song for』で、これが2022年流の青なんだろうなと思ったり。たぶん、真っ直ぐに鋭い光を放っていた青が、少しずつ柔らかくしなやかな青に変わっていたんでしょうね。それに私が気付けなかっただけなんだろうな。

それと、この曲のダンサーがMIKUさんとSAIKAさんで、長くステージを支えてきた2人が踊っていることの必然性を感じてグッときちゃいました。

 

と思えば、『Skyreach』は変わらず真っ直ぐな目で、青いマイクスタンドをかっちょよく携えていて、「そうだ、この人は声優として歌う人、曲の主人公を歌う人だ」というのを再認識したり。セットリストは今の考えにアップデートされていくけど、曲に宿る思いはそれほど変わっていないのかなぁと思った。

「声優として歌う」で言うと、『君を通して』が印象的でした。アニメ『彼女、お借りします』挿入歌として配信リリースされたこの曲、雨宮さん本人名義ではあるけど、雨宮さん演じる水原千鶴の要素もバッコリと含まれているて、左側頭部の髪飾りは千鶴の髪型を意識したのかな、とか。愛知公演の会場限定カラーが赤だから披露したのかな、とか(これで大阪公演も歌ったらどうしよう)。

 

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「心の中で一緒に歌って」の煽りから披露された本編ラストの『Next Dimension』は歌詞がわからなかったし、「私の思いを受け止めてください」の煽りから披露されたアンコールラストの『This Hope』は曲名も、雨宮さん本人が作詞曲をしていることも知らなかった。

だから曲に込められたメッセージはあまり分からなかった(大阪までにちゃんと聴きます)んだけど、それ故に強く印象に残っているのは「受け止めて」の言葉で。

 

あまりに迷惑をかけてはいけないけど、そのままの自分を受け入れてくれたり、受け入れるまでいかなくとも、受け止めてもらえるって幸せですよね。

空腹3 | 雨宮天オフィシャルブログ「天模様」Powered by Ameba

 

雨宮さんは「受け入れる」と「受け止める」の使い分けを明確に意識している人だと思っていて、私は雨宮さんのことを「受け止め」たい。その距離感が心地よいし、そういう関係でありたいと思っているんだけど、雨宮さんの口から「受け止めてください」と言ってくれたことが嬉しかったし、その曲が本人の作詞曲であると知って、余計嬉しくなりました。

 

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終演後、名古屋駅に向かうタクシーの中で、雨宮さんが今年29歳になることに気付いて驚きました。私にとって雨宮さんは25〜6歳の印象があって、それは2018〜2019年、つまり3年半前のことで。時の流れをそこで止めてしまっていたということなんだろうな。

 

思えば、この3年半で私はだいぶ変わった。

一人暮らしを始めてみたり。また実家に戻ったり。人を愛することを知ったり。結婚したり。料理が好きになったり。床屋ではなく美容院に行くようになったり。仕事でいろんなものを任されるようになったり。YouTubeをたくさん見るようになったり。6つに割れてた腹筋が丸くなったり。音楽聴取はサブスクがメインになったり。自分で4連のチケット代を払えるようになったり。冬場はルームソックスを履くようになったり。納豆が好きになったり。夜行バスではなく新幹線で遠征するようになったり。ライブ前の時間潰しがキャッチボールからデパ地下巡りになったり。オタク友達との会話が「家を買うにはどこから始めればいいか」になったり。

 

そんな、人が変わるには十分すぎる年月の間、雨宮さんもいろんな変化をしていて。それを音楽で表現して、届けてくれたことが嬉しくて。

「丸ごと包み込んだ上で今の自分が何を思うのか」。それは、この人を好きになって良かったな、間違ってなかったな、かっこいいな、っていう、もう何度目かも分からない、どこか懐かしい、それでいてこれまでとは何か違う味わいのある気持ちでした。

 

ツアーは残り2都市。ちゃんと向き合って、受け取って、受け止めて、拍手を送りたいと思います。

 

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