せーはくの備忘録

備忘録(びぼうろく)は、記憶すべき事柄を簡単にメモするための個人的な雑記帳である。

20170530 舞台「あさひなぐ」

2017年5月20日より、EXシアター六本木で上演されている、舞台「あさひなぐ」。
5月30日の公演が、映画版のキャスト発表も兼ねており、ライブビューイング配信があったので、LVにて観劇してきました。

それの感想記事です。


舞台・映画プロジェクトの公式サイト→こちら

日刊スポーツのレポート記事→こちら

リアルサウンドのレポート記事→こちら



配役(乃木坂46のメンバー)

東島旭 齋藤飛鳥
八十村将子 井上小百合
紺野さくら  新内眞衣
宮路真春 若月佑美
野上えり 生駒里奈
一堂寧々 堀未央奈
寒河江 衛藤美彩
的林つぐみ 北野日奈子






 
まずは僕の状況を整理。

原作(既刊22巻)は14巻まで読了。
舞台で上演されたのは12巻くらいまでかな。

普通の(?)舞台はちらほら見てきたけど、乃木坂メンバーが出演している舞台で観たことあるのは、
「虹のプレリュード」
嫌われ松子の一生
「墓場、女子高生」
ロミオとジュリエット
レ・ミゼラブル
だけのはず。 





各キャストについての感想。
演技力云々についてはそもそも期待していないというか、そこを評価基準にしてしまうと普段見てる俳優さん達には敵わないので、できるだけ度外視して。

LVだから見落としている部分もたくさんあると思うけど、見えた範囲感じた範囲で。



ほかの人達の感想はどうなんだろ~と思って軽く検索してみたら、僕が感じたこととかなり近いブログを書かれている方がいました→こちら

びっくりするくらい共感する部分が多かったので、なんだかパクっているみたいになりましたが、そんなことはないよ。




ネタバレ含むのでご注意を。




齋藤飛鳥さん。

キャストをどう決めたかは分からないけど、おそらく(飛鳥さんの場合は特に)立候補ではなく指名だったと思うし、それでも飛鳥さんなりの旭を解釈して演じられているのは好印象。
舞台役者、しかも主人公としては致命的かなと思っていた顔の小ささや華奢さも、旭役ということを鑑みればマッチ。
会話をするシーンはそれほど多くなかったものの、独白だったり、モノローグだったりが多く、観客はどれだけ旭に感情移入できるかが重要だったと思うのですが、飛鳥さんが持つアイドルパワーで十分に惹きつけられました。
薙刀ド素人の旭が成長し、クライマックスの代表戦で勝つという成長物語」という大筋だったので、欲を言えば薙刀スキルの向上を感じられると尚良かったかな。



井上小百合さん。

ヤンキーっぽい中性的なキャラである将子は、普段の「さゆにゃん」とは違うようで、井上さんが本来持つ男の子っぽさを活かせる役でした。
顔立ちや声質の可愛らしさがどう出るかなぁと思っていましたが、さすが役者経験も比較的豊富な井上さんといったところ。
ちゃんと将子やれていたと思います。
原作はどちらかと言うと淡々としている子だと思っていたのですが、井上さんは若干クソガキっぽさが強調されている印象。
ただ、まぁこれは個人的に…という感じではあるのですが、「作ってるクソガキ感」が強すぎて、将子が持つ奥深さだったり覚悟だったりを感じられなかったのは残念。
そういうのを描いている脚本ではなかったし、舞台慣れしていない観客を相手に「男口調のキャラ」として印象付けようとするなら仕方ない面もありますが。



新内眞衣さん。

グループ最年長にして、「墓場、女子高生」に続き2作連続の女子高生役。
ハカジョで「演技いけるなー」と思っていましたが、ハカジョのつっけんどんでサバサバしたキャラから一転、今回はお嬢様で腹黒なぶりっ子を好演し、演技の幅を感じました。
薙刀では、「とにかくブンブン振り回す」というキャラ設定のためそういうシーンが多く見られましたが、その中でも演技として魅せなければならない部分もあり、結構難しかったのではないかと思います。



若月佑美さん。

さすがの一言。
所作の美しさだったり、視線の向け方だったりが計算されていて、本当に綺麗でした。
薙刀がとにかく強い真春を演じるということで、アクションシーンも相当気合入ってたと思います。
あんまり言うことがない。



生駒里奈さん。

評価が難しいですね。
端的に言うと、合ってなかった、ということに尽きるような。
3年生の描写をばっさりカットしたことで、物語の最初から「部長」として振る舞うことを求められ、それによって進行役も兼ねていたわけですが、うーん。
そういう役回りは、乃木坂46内で生駒さんに期待されているところと一致する部分があって、そういう理由で野上えり役を任されたのかな、と思っていて見る前は楽しみだったんですが、合ってなかったかなぁ。
えりって恋に恋する乙女みたいな要素もあるけど、生駒さんはそうではないし、「リーダー」というひとつの共通点から野上えりを演じるには、少し無理のあるキャスティングだったかもしれん。



堀未央奈さん。

よかったですね。
というか、姉に関するエピソードも無かったので、単純に周囲に対し突っ張ってれば良いという分かりやすい役だったおかげも多分にあると思います。
ポニテにすると、堀さんの場合はつり目が強調されるので、寧々の近寄りがたい雰囲気にマッチしていました。
本来ならば、めっちゃくちゃ薙刀が強い役ではあるものの、そこまでその実力を示す必要もなかったのも好都合でした。
まぁ堀さんの運動能力なら薙刀もちゃんとやれていたとは思いますが。




衛藤美彩さん。

旭以外のパーソナリティを掘り下げない脚本のなかで、寒河江という役は特に難しいなと思っていて、「優しくて世話好きなお姉さん」に留まってしまった印象。
ドラマ「初森ベマーズ」でしか衛藤さんの演技は見たことがなかったのですが、衛藤さんが本来持つ暖かさだとか母性だとか、そういう部分を活かしつつも、リアルサウンドの記事にもあるように厳しさを出せるようになると、少ないセリフ量でも深みが出ると思いました。
ただ、衛藤さんがいることだったり、衛藤さんの声が響くことだったり、その存在で安心感が生まれるのはさすがでした。



北野日奈子さん。

寧々のライバル…というか陰に隠れてしまっている役ですが、その寧々自体があまり描かれないため、どうしても的林の存在感も薄くなってしまいました。
ほぼ唯一の見せ場として、「あんたのこと嫌いだし、あんたも私のこと嫌いだと思うけど、あんたのこと好きになりたいと思ってる」みたいなセリフを言うシーンがありましたが、さすがに唐突感が否めなく、棒読み感がありました。
普段の北野さんが持つ、太陽のような明るさだけでは表現しきれない的林という役を演じるのは、北野さんにとって大きなチャレンジだったと思いますし、今後の公演やグループ活動に期待ですね。





総括すると、乃木坂メンバーはよく頑張ったと思います。 
忙しいなか稽古も頑張っていましたし、役に対して体当たりで挑む姿勢や、その背後に見える刹那性は、アイドルが演じることの本質や意義を感じられて素敵でした。



ただ、(言い方は悪いけど)演技力がないのは最初から分かっていたことで、それならどうやってキャラクターや作品の魅力を乃木坂に託していこうか、というのに注目していたんですが、正直残念。
演技力が無い分を脚本だったり演出だったりで補完して、棒読みを棒読みに聞こえさせない工夫が欲しかったところです。

また、さっきもちらっと書きましたが、全体的に唐突感が否めない。
12巻分のストーリーを端から端まで描くのは当然無理なので、主人公である旭の成長物語に焦点を当てたのは妥当な判断だとは思います。
でも、それにしてもダイジェストすぎやしないか…?と思ってしまいました。

例えば、
【真春が寧々に敗れ、二ツ坂の5人が「真春だけに頼らない」と決意し、特訓し、真春が戻ってくる】。
文字に表すとこれで済む一連の流れをどう表現するかっていうのに青春のドラマチック性があるはずなのに、ほんとダイジェストじゃんってくらい、この文のまんまだった。

予告編でも印象的に使われていた「私たちはもう、後戻りできないところまで来てしまっているのです」も、原作では読んでいて鳥肌モンだったのですが、これもまた唐突感があり、「いきなり熱いやん…」と観客置いてけぼり、みたいな。
あの真琴つばささんのセリフですらも唐突感を覚えましたし、演技力って話じゃないと…思うんだよな…。


原作でキーになるセリフや、欠かしてはいけないシーンはある程度拾えていたのですが、あまりにそこに固執するあまり、全体としての抑揚に欠けていた(あるいは抑揚がありすぎてぶつ切りだった)感じ。
そのぶつ切り感を、旭のモノローグで埋めていたようにも感じて、ちょっと無理やりだったかなぁと思いました。

そもそも論ではありますが、乃木坂ファンにしか分からない小ボケが多いなど、乃木坂46のファン以外をターゲットにした舞台作品ではありませんし、「キャラの魅力」ではなく「乃木坂メンバーの魅力」を伝えるための作品だったと捉えればその狙いは成功していたと思います。
みんな可愛かったし。

ただ、それは近年の乃木坂46が目指してきた演劇性とは少しベクトルが違うようにも感じていて、ちょっと残念だったかな。






せっかくキャスト発表会も見られたので、映画について少し。


人気のある西野七瀬さんと白石麻衣さんを起用していますし、舞台に比べ敷居の低い映画というエンタメですし、舞台版とは違って一般層をある程度意識しているのかな、という第一印象がありました。

そこで、30日に追加キャストが発表されたことで、やっぱりそうか、と。

象徴的なのは、野上えり役を演じる伊藤万理華さん。
先述したように、舞台版の生駒さんはグループ内の立ち位置をそのまま当てはめたようなキャスティングでしたが、万理華さんの場合は本人も「ファンの方が見たら違和感を覚えるんじゃないかな」と仰っているように、グループ内で万理華さんが担っているのとは違う役割。
もし、生駒さんをえりに指名したのと同じ思考回路でえりを選ぶなら、ポンコツキャラとは言えキャプテンを務めている桜井玲香さんになるのが自然です。
でも、その桜井さんは将子で、万理華さんがえりでした。

ということは、乃木坂46内における万理華さんの立ち位置を知らない人でも楽しめるような、伊藤万理華ではなく野上えりとして見せるような映画になっていると予想。


予告編を見ると、特に舞台版の続きというわけでもなく、原作をなぞってやるようなので、舞台版と映画版でどう違いが出るのか楽しみです。






おわり